目はしょぼしょぼ、鼻ぐじゅぐじゅ。花粉症のイヤ〜な季節がやってきた。日本気象協会は21日、今春のスギ、ヒノキの花粉飛散量が昨年の5〜10倍との予報を発表、保健所などに相談窓口をつくるなど厚生労働省も初めて緊急対策に乗り出す。少しでも楽に乗り切るにはどうしたらよいのか? 花粉症関連グッズの正しい使い方は? 傾向と対策を調べた。
予防グッズの代表格はマスクだ。多くに「花粉やウイルスなどを99%カット」との表示が目立つ。国の一定の基準を満たした医療用品と思いがちだが、「市販のマスクは医療用品ではなく、効能はうたえない」(厚労省監視指導・麻薬対策課)という。
では、何を目安に選べばよいか。奈良県立医科大学の井手武助手らは45人にガーゼ、不織布、フィルター付きなど6タイプのマスクをしてもらい、花粉の侵入具合や息のしやすさなどを調べた。
その結果、どのタイプでも正面から来る花粉の9割前後は阻止できたが、鼻の上やほおのすきまから花粉が入ってくることが分かった。井手さんは「どんなに素材がよくても、すきまがあっては効果はない。すきまができないよう自分の顔の形にぴったりと合うマスクを選びたい」と話す。
すきまから花粉が侵入しても、鼻の穴に入らなければよい。その防止法として、井手さんは「口と鼻を包みこむように、あてガーゼをすると効果的だ」とアドバイスする。長さ6〜7センチ、幅1センチ程度の長いガーゼを鼻の穴の前にあてがい、さらにあてガーゼをすれば完ぺきに近くなるという。
有益な乳酸菌を含むヨーグルトや飲料なども予防法の一つだ。乳酸菌の中には免疫細胞の働きを活性化させたり、免疫細胞同士のバランスを整えたりして、アレルギーの症状を和らげる働きをもつものがある。
例えば、キリンビールなどが開発したKW乳酸菌。花粉症の28人に1日200ミリリットルのKW乳酸菌入りヨーグルトを4カ月間食べてもらったところ、食べないグループに比べ、血液中の免疫細胞のバランスがよくなり、鼻水やかゆみも軽くなることが分かった。同様の効果はLC1(ネスレ・スノー)、Lー92(カルピス)などでもみられる。
乳酸菌の健康効果に詳しい昭和女子大学の飯野久和教授は「乳酸菌だけで花粉症が治るわけではない。半年〜1年くらい継続して取るとアレルギー疾患になりにくい体質づくりに役立つ。ただ、家族そろって食べるには値段がちょっと高い」と指摘する。
外出を減らすのが一番効果的だが、そうもいかない場合は、花粉の飛ぶ量が比較的少ない日や時間を選ぼう。
現在の花粉の飛散量や風向きは、環境省のサイト「花粉観測システム(はなこさん)」(http://kafun.nies.go.jp/)でチェックできる。日本気象協会やウェザーニューズは、携帯電話向けにも全国各地の花粉情報を発信している。
東京慈恵会医科大学講師の遠藤朝彦(ともひこ)さん(58)は「帰宅後は、上着は玄関でそっと脱いで置き、花粉を部屋に持ち込まないように」とアドバイス。
ライオンは、衣類についた花粉を花粉破裂抑制剤の粒子で包むスプレー「花粉ガード」を発売。花粉は鼻の粘膜につくと膜が破れてアレルゲンが放出されるので、破裂を抑えようというもの。
フマキラーも衣服にスプレーし、花粉をつきにくく、落ちやすくする「花粉 服でブロック」や、鼻の穴に塗ることで皮膜をつくり、花粉が直接触れるのを防ぐクリーム「花粉 鼻でブロック」を今シーズン売り出した。
花粉症の患者は30〜50代が多い。ところが最近、高齢者や子どもの患者が目立つとの指摘がある。
特に花粉症の高齢者の場合、内臓疾患や生活習慣病なども併発すると診断や治療はややこしい。鼻水は花粉症によるのか老人性の疾患なのか。併用できる薬は何か。
東京慈恵会医科大耳鼻咽喉科の遠藤朝彦講師は「アレルギー症状を起こすにも、それを治すにも体力がいる。花粉症はできるだけ若いうちに対処しないと将来面倒です」と心配する。
花粉は来年もその先も飛散する。「思い立ったら治療を始めることです」と遠藤さん。今年はマスクなどで自己防衛し、さらに薬などで症状を緩和させる。3年後の治癒を目指し、減感作(げんかんさ)療法などに取り組むと、年をとってからが楽になる。
一方、子どもの発症者は増えている。
日本医科大耳鼻咽喉科の大久保公裕(きみひろ)助教授(45)は02年3月、都市部で働く大人958人とその子ども1285人を調査した。大人でスギ花粉症の患者は39・7%、子どもたちでは16・1%。花粉症の発症年齢を尋ねたところ、「15歳まで」と答えた人は、大人は約5%だったのに対し、子どもでは約10%と2倍だった。
また01年4〜5月にイギリスの専門誌が行った調査では、日本人の子どもの花粉症患者の割合は、3〜5歳が4・5%、6〜9歳が10・5%、10〜12歳が12・1%、13〜15歳が15・1%だった。
低年齢化の理由は、食生活が欧米型になった▽気密性の高い住居が増えた▽大気汚染−−などが複合的に絡み合った結果だという。大久保さんは「子どもに使える薬の種類は少なく治療は難しいが、早め早めの対処を」と話している。
花粉症特有の水っぽい鼻水。鼻をかみすぎて鼻の周りが赤くただれることも多い。そんな時、肌にやさしいのは保湿性を高めたティッシュペーパーだ。
製紙メーカーの河野製紙(本社・高知市)は93年、日本で初めてしっとりやわらかな保湿性の高いティッシュ「保湿ペーパー」を発売した。
普通のティッシュの保水率は6%ほどだが、保湿ティッシュは約12%。化粧品などに使われるグリセリンや、甘味料のソルビトールなどを紙の表面に塗ることで、紙についた空気中の水分を逃げにくくした。
「ローションティッシュー」という保湿性の高いティッシュを作る大王製紙によると、保湿成分としてグリセリンやソルビトール、天然アミノ酸由来成分やビタミンCなども配合。
難点もある。ドラッグストアでは、保湿ペーパー3箱598円ぐらい、ローションティッシュー1箱220円ぐらいと普通のティッシュに比べ、少々高い。両社とも保湿成分の原材料費や、薄い紙に成分をぬる手間、紙質の工夫など、高品質化を理由として挙げている。
神尾記念病院顧問、斎藤洋三さん(72)は、花粉症の対処法として、(1)花粉に触れない(2)薬物療法(3)減感作療法(4)手術療法−−の4本柱を挙げる。斎藤さんは1963年、杉並木で有名な栃木県日光市の病院で鼻アレルギー患者を診て、日本で初めてスギ花粉症を発見、命名した医師だ。
(1)はマスクなどで花粉に極力触れないように自己防衛すること。
(2)は、予想される飛散日の1〜2週間前から抗アレルギー薬を使うこと。第2世代と呼ばれ副作用の少ない抗ヒスタミン剤をはじめとする内服薬をのみ鼻用のステロイド薬を併用するとよい。
(3)は薄めた花粉のエキスを少しずつ注射するもので、最低4カ月〜1年はかかるうえ、すべての人に効くわけではない。 (4)は鼻の中の粘膜をレーザーで焼き、花粉をつきにくくする方法。ただし翌年までには粘膜は元に戻るので効果は失われる。
斎藤さんは「それぞれの役割や効果が違うので、時期なども考え、対処しましょう」と説明する。「食品や飲料などは補助的なものとしてとらえたほうがいい」とも。
自分は花粉症になる体質か、アレルゲンは花粉だけなのかなどが気になる人は、耳鼻科や眼科などのアレルギーに詳しい専門医を受診する。専門医は、日本アレルギー学会のホームページ(http://www.js-allergol.gr.jp/)に掲載されている。